2020.08.06
沼津の風景探訪 ~その1~
設計部の野呂です。

前回に続き、弊社の地場である三島・沼津・伊豆地域の身近な「風景」について、観察記録を投稿します。

 

さて今回は、沼津の牛臥・島郷・志下海岸周辺です。市民の憩いの場になっているこれらの海岸には、

明治26(1893)年造営の沼津御用邸(東附属邸及び西附属邸のみ残存)、学習院沼津遊泳場をはじめ

文学者や実業家の別荘跡が少なからず残っており、往来の避寒地としての趣が感じられます。

 



 

さて、この辺りを歩いてみると人の背丈程の竹を編みこんだ垣が目につきます。

「沼津垣」と呼ばれるこれらは、箱根西麓に自生する篠竹(女竹)を杉綾模様に編んだもので、

駿河湾の西風や砂から畑や住まいを守るため、江戸時代から独自に利用されてきたようです。

 



 

製作現場に立ち会うと、重労働であることが分かります。

16本の竹の束(「手」と呼ぶ)を3日程の時間をかけて編みこんでいきます。

特に端部の曲げの作業は、熱を加えながら行う重要な工程だと言います。



沼津垣は、作り手不足や安価な建材塀の普及によって、その数は減ってきているとのこと。

地場で採れる材料をを利用する(山の管理にも連動する)ことから、石油製品と対照的に持続可能な垣と言えます。

沼津の穏やかな風景の要素として、継承・発展されていくことを切に願います。