2012.08.31
芙蓉の花~おわら風の盆
あれもこれも担当の千葉です。

 

庭の芙蓉の花です。猛暑の間、約2ヶ月に渡り花を咲かせ、楽しま

せてくれます。

 



芙蓉はアオイ科の夏の花です(7月から9月に掛けて咲きます)。

ご当地に住む私たちには『芙蓉』と言えば『富士山』と頭の中の

回路は直結しますが、『芙蓉』はもう一つ、『ハス(蓮)』の美称で

もある為、二つの花を区別するために、水に咲く蓮を『水芙蓉』、

低木の芙蓉の花を『木芙蓉』と言うこともあるそうです。

 

この芙蓉の花、朝に咲き、



夕方には萎んでしまいます。



決して小さくもなく、弱々しい感じでもないのに、なんとなく儚い

イメージがあるのはこの一日咲きの所為でしょうか。

 

また、咲き始めの朝には薄白く、萎んでしまう夕方に向けて段々

赤みを増して行く『酔芙蓉(すいふよう)』もあるそうです。我家の

芙蓉はと見ると、どうやら『ほろ酔い芙蓉』のようです。

 

私は芙蓉の花を見ると、高橋治著の小説、『風の盆恋歌』を思い

出してしまいます。舞台は越中八尾の風の盆。四高(現、金沢大

学)出身の著者ならではの題材です。この小説の主人公達が、

風の盆の期間だけ使う八尾の別宅の玄関先に植えられていたの

が芙蓉の花でした。きっと著者は、主人公達の恋の行方の儚さを、

おわら風の盆の地方(じがた)である胡弓の音色の儚さと、一日咲

きの芙蓉の花の儚さとで象徴して見せたのでしょう。

 

風の盆は毎年9月1日~3日に開催され、この山あいの小さな街

に信じられない程の多くの観光客が訪れます。

 



我が街三島にも全国に名立たる『農兵節』という伝統芸能が

あります。私は秘かに、水泉園(白滝公園)の浅瀬の上に

特設ステージを掛け、そこから清流・桜川沿いに、仄暗き宵闇

の中を農兵節の踊り手達が、ゆっくりと、そしてまったりと流れ

てゆく光景が実現できないものかと、それこそ『儚き』夢を抱い

ています。

 

因みに、小説家・高橋治氏はこの地域と縁少なからぬ方のよ

うで、韮山を舞台にした(旧制韮山中学=現、韮山高校から

金沢四高に進学した学生が主人公の)小説『名もなき道を』が

あったり、当社も建築のお仕事を戴いたことのある修善寺の

名旅館『あさば』の水上能舞台で風の盆が演じられたりします。