2013.12.02
三島の宝・国立遺伝学研究所~トリコロールのお・も・て・な・し
あれもこれも担当の千葉です。

 

師走の声を聞くと、月日の経つのが早いと感じるのは、単に私の加齢の問題

ではなく、日本人の(或いは暦で暮らす文明人の)DNAなのかも知れません。

あと一週間もしない内に二十四節気の『大雪』、本格的な冬の訪れです。

 

そんな師走の一歩手前、11月の終わりに、某団体で三島にある国立遺伝学

研究所を見学して来ました。まだ残暑厳しい頃に別の団体でも見学・聴講に

来ましたので、今年二度目の見学でしたが、正面玄関の彩りの『お・も・て・な・

し』に大感激。



 

三島市民に『遺伝研』と呼ばれ親しまれている『国立遺伝学研究所』は戦後間も

なく、旧中島飛行機の工場跡に設立され、日本の、否、世界の遺伝学研究の中

核機構・施設として永年活躍してきました。1988年には、『国立総合研究大学院

大学』としてもその一部を構成することになり、研究者のみならず、日本中の遺

伝学の教育者を排出しています。

 

10年ほど前に見学に行った時には、ちょうど世界がヒト・ゲノムの解読の完成を

今か今かと待ち望んでいる時でした。その世界中のゲノム情報が、日・米・欧(英

国)の3拠点に集約され蓄積されて世界中の研究者に供用されている、そしてそ

の日本の拠点とはこの三島の遺伝研だと伺って、なんとも誇らしく思ったことが

あります。そう、三島は世界中の遺伝子情報のデータ・バンクなのです。

 

一方で、こうした研究のために、遺伝研には古くからスーパー・コンピューターが

配置されていて、周期的にバージョン・アップされているそうですが、スーパー・コ

ンピューターの能力差のせいで近時は中国にその地位を脅かされる可能性があ

るとも聞きました。

 



遺伝研は桜の研究でも有名です。この桜に関して、講義で教わった内容を

ひとつご紹介してみます。

 

日本には沢山の桜の品種がありますが、野生種(自生種)はたった10種類。

チョウジザクラ、カンヒザクラ、マメザクラ、ヤマザクラ、カスミザクラ、ミヤマ

ザクラ、タカネザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、オオシマザクラです。他

の種は全てこの10種の桜の交配種だそうです。

 

例えば『染井吉野・ソメイヨシノ』はエドヒガンとオオシマザクラの交配種。

『河津桜』はカンヒザクラとオオシマザクラ。私の大好きな『三島桜ミシマ

ザクラ』は染井吉野とオオシマザクラの交配種だそうです。

 

細胞遺伝学の研究の一環として、桜の代表品種である『染井吉野』の種の

起源を追究すべく、遺伝研には日本全国から250種を超える桜が植えられ

ました。最近は桜の季節(4月上旬)に2日間だけこの遺伝研が市民に開放

され、様々な種類の桜が楽しめますが、遺伝研に続く谷田の坂道に遺伝研

が植えた桜並木は桜の名所で、桜の季節にはゴザを敷いて花見をする市民

で毎年賑わいます。皆様も来年の春にご覧になってはいかがでしょうか。

 

付録:



すっかり葉を落とした『山桜枝垂ヤマザクラシダレ』。もともとは

『ヨシノシダレ』の名であったが、樹性にヤマザクラの性質があり、

1981年になって現在の名が付けられたとのこと。